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2026年3月7日(土)、大阪・梅田にて、行政書士写楽国際法務事務所の代表行政書士、松本裕之の主宰により、第4回「こども性暴力防止法(日本版DBS)」勉強会が開催されました。

本制度の2026年12月25日施行を目前に控え、実務家の関心はかつてなく高まっています。今回の勉強会には、新たに社会保険労務士3名を含む12名がリアル会場に集結。さらにオンラインでは、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、岡山県、熊本県、沖縄県と全国各地から接続し、合計25名という大規模かつ熱気あふれるハイブリッド開催となりました。

会議の冒頭では、オンライン接続の調整が行われた後、松本氏より「他者の発言を頭ごなしに否定しないこと、ただしガイドラインに基づく具体的な指摘(ダメ出し)は歓迎する」「AIに頼らず、参加者自身の頭で考え、意見をぶつけ合うこと」という本勉強会の基本ルールが共有され、3時間にわたる密度の濃い議論がスタートしました。

1. 認定対象事業者向け「模擬セミナー」の実施

今回のメインプログラムは、実際に営業活動やセミナー登壇を予定している実務家へ向けた「模擬セミナー(予行演習)」です。登壇者として林先生が立ち、事業者向けのプレゼンテーションを披露しました。

 

日本版DBSの目的と制度の核

林先生はまず、2026年12月に施行される本制度の目的が「子どもと接する職場での性暴力を防ぎ、子どもの心と体を守ること」であると力説しました。制度の核となるのは、採用時や配置転換の際に、候補者が「特定性犯罪事実該当者」であるかどうかを、事業者やこども家庭庁を通じて客観的に照会できるようになった点です。

 

認定事業者の要件とメリット・デメリット

学習塾、スイミングスクール、英会話教室、認可外保育所などの任意の事業者が「認定対象事業者」となるための4要件として、「支配性」「継続性」「閉鎖性」「従業者が3人以上いること」が提示されました。

  • メリット: 国が発行する「こどもまもろ」マークの使用許可、保護者からの圧倒的な安心感の獲得、それに伴う採用力の強化。

  • デメリット・義務: 安全確保措置(定期的な研修の実施、相談窓口の設置など)の義務化、および厳格な情報管理体制の構築。

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認定取得のロードマップ

林先生は、認定取得にむけて事業者がすぐに行うべき「初期の3ステップ」を提示しました。

  1. GbizIDプライムの取得

  2. 就業規則等の関連規程の改定

  3. 採用フローの抜本的な見直し

また、申請から認定完了までにはおよそ1~2か月を要すること、新規採用者だけでなく現職のスタッフについても認定後1年以内に犯罪事実確認を行う必要があるため、社内への丁寧な説明が不可欠であることが強調されました。


2. 専門家からの鋭いフィードバックとセミナー戦略

林先生の充実したプレゼンテーションに対し、参加した行政書士や社会保険労務士から、より実務的で顧客に「刺さる」ための具体的なフィードバックが次々と寄せられました。

 

情報の取捨選択と見せ方の工夫

行政書士写楽国際法務事務所(松本)からは、「規定を網羅している点は素晴らしいが、情報量が多すぎるため、参加者に持ち帰ってもらうポイントは2〜3つに絞るべき」との指摘がありました。 また、糸永先生からも、「資料の冒頭で犯罪発生数などの背景情報を詳細に語るより、『結局事業者はどうすればいいのか』『認定のメリットでいかに子供を守るか』に焦点を当てるべき」という意見が出されました。これに対し松本先生は、「年間でどれぐらいの犯罪が起こっていると思いますか?」と質問形式で簡潔に数字(年間約5000件)を提示し、インパクトを与える手法を提案しました。

 

営業戦略としてのリスクとインセンティブの提示

田中先生からは、「行政書士にどこまで丸投げできるのかを明確にし、パッケージ化して費用を明示すること」の重要性が語られました。 顧客へのリスク(デメリット)の説明については意見が交わされました。田中先生や松本は、最初から全てのリスクを開示すると契約のハードルが上がるため、インセンティブを前面に出しつつ段階的に説明するアプローチを提案。一方、糸永先生からは「専門家に任せる部分と自力でやる部分を分け、最初からリスクも全て説明して信頼を得る」という真っ向からの営業スタイルも提示され、参加者それぞれの経営哲学が垣間見えました。

また、松本から「制度対象の4要件(支配性など)は言葉が難しいため、セミナーでは『子供と対面で接する』『3人以上』など最小限に留め、『まずは専門家に相談してください』と誘導して、事業者の自己判断による申請見送りを防ぐべき」という実践的なアドバイスもありました。さらに、名刺にも使える「認定マーク(こまもろうマーク)」の画像を資料に盛り込むことで、「取得しないと競合他社に負ける」という危機感を視覚的に訴えかける手法も合意されました。

 

規程整備と他士業連携(非弁行為への注意)

戸田先生からは、セミナーレジュメに「児童対象性暴力と対処規定」が抜け落ちている点、そして就業規則とこの規定、さらに情報管理規程は整合性を持たせて一体で定める必要があるとの鋭い指摘が入りました。

これに関連して、臼渕先生から「トータルサポートプランの費用(例:30万円)に、社労士の就業規則作成費用は含まれるのか」という極めて重要な質問が飛びました。 松本はこれに対し、「行政書士が社労士や弁護士の報酬を自身の報酬に含めて一括請求することは、弁護士法や社労士法などの法律違反に抵触する」と明言。行政書士が提示するのはあくまで行政書士業務のみの報酬であり、事業者に顧問社労士等がいればそちらを利用し、いなければ無償で専門家を紹介した上で、事業者が別途直接契約・支払いを行う必要があるという、コンプライアンス上極めて重要な原則が共有されました。


3. 実務の最前線:GbizID取得とマイナンバーの壁

実務上、最初の大きなハードルとなるのが「GbizIDプライム」の取得です。

取得期限と罰則の有無

井上先生より、「義務事業者・認定事業者のGbizID取得期限が4月末とされているが、多忙で遅れる事業者が多いのでは」という懸念が示されました。戸田先生らからは、「期限超過による直接の罰則はないものの、5月末の一括登録に間に合わないと事業者側の事務負担が激増するため、理屈抜きでまずは4月末までにGbizIDプライムを取らせるよう急がせるべき」との見解が示されました。

 

マイナンバーカードの暗証番号問題と報酬設定

山田先生や宇山先生からは、GbizID申請におけるマイナンバーカードの実務課題が共有されました。アプリ経由で申請する場合、カードの4桁の暗証番号に加え、16桁の署名用電子証明書暗証番号が必要になります。山田先生は、「この番号を忘れている経営者が非常に多く、ロック(4桁は3回、16桁は5回でロック)がかかって役所行きになるケースが多発する」と現場のリアルな苦労を語りました。また、従業員が「情報が国に漏れる」とマイナンバー提出を拒むケースについても、「そこは国の方針として許容できない部分である」と事業者が毅然と対応できるようアドバイスすべきだという意見が出ました。

この手間を考慮し、井上先生から「GbizID取得サポート単体で1万円前後が妥当では」という提案があり、山田先生も、高齢でデジタルに不慣れな顧客には相応の手数料を設定すべきと同意し、価格設定(タイムチャージ制か固定総額制か)についても深い議論が交わされました。


4. 現場のリアルな悩み:Q&Aとエッジケースの議論

後半の質問タイムでは、多種多様な業態におけるDBS適用のグレーゾーンについて白熱した議論が展開されました。

  • フランチャイズの扱い: 戸田先生の回答により、FC本部(フランチャイザー)が認定を取得しても加盟店(フランチャイジー)には波及せず、加盟店ごとに個別取得が必要であることが確認されました。

  • 短期雇用の壁: タイミーのような単発・短期雇用(ギグワーク)について、杉本先生から「犯罪歴照会に約2週間かかるため、実質的に短期雇用が成り立たないのでは」という構造的な矛盾が指摘されました。しかし、こども家庭庁の方針はそれでも「照会必須」であり、現場と制度の乖離にどう対応するかが課題として浮き彫りになりました。

  • 性犯罪の定義と従業員の認識不足: DBSの対象には、刑法犯だけでなく痴漢や盗撮などの条例違反も含まれます。特に「大学生と高校生の恋愛トラブルで未成年者性交等に問われ、罰金刑を受けた」ようなケースでは、本人が「自分に性犯罪歴がある」と認識していない危険性が指摘されました。

  • 「女性だけの職場」の誤解: 保育園などで「うちは女性スタッフしかいないからDBS認定は不要」と考える事業者に対し、三井先生は、「現代において『女性しか採用しない』という方針自体が男女雇用機会均等法等の法律違反になり得る。男女差は関係なく義務(または認定要件)であることをきっぱり伝えるべき」と警鐘を鳴らしました。

  • 福祉分野の研修要件: 山田先生と井上先生の間で、放課後等デイサービス等における虐待防止研修の深さについて議論され、福祉局の監査対策としては、動画視聴等のオンラインコンテンツを活用し、実施記録(レポートや議事録)を確実に残すことが重要であるという実務的なハックが共有されました。


5. 総括と今後の展望

最後に、井上先生から非常に興味深い報告がありました。〇市議会の議員と面会した際、「民間のDBS導入が一向に進んでいない」と強い危機感を持たれており、行政書士との連携を模索する動きがあるとのことです。さらに、こども家庭庁の相談窓口に行政書士が業務委託で入る可能性も示唆され、「大阪をはじめとする全国の行政書士は、これからこの業務で非常に忙しくなる」という明るい見通しで、あっという間の3時間が締めくくられました。

日本版DBSは、単なる書類の作成代行ではありません。事業者の採用フロー、就業規則、そして「子どもを守る」という企業風土そのものを根本から作り変える壮大なプロジェクトです。だからこそ、行政書士や社会保険労務士がタッグを組み、各々の専門性を発揮して伴走支援することが不可欠です。

次回の第5回勉強会は、2026年3月24日(火)に大阪・梅田(およびオンライン)にて開催予定です。さらにブラッシュアップされたセミナー模擬と、最新の行政動向の共有が予定されています。

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