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【完全ガイド】日本版DBSのポイント①事業照会型とは?
前科情報の取り扱いや罰則、要配慮個人情報について徹底解説

本ページでは、日本版DBS(こども性暴力防止法)の制度理解において最も重要となるポイントの1つ、「事業者照会型」という仕組みについて、網羅的に解説します。事業者に前科情報が提供されることの重みから、情報漏洩時の損害賠償リスク、従業員等に対する秘密保持義務、そして厳格な罰則規定に至るまで、徹底的に深掘りします。教育・保育施設の経営者や人事・労務担当者の方々は、今後の制度対応に向けてぜひ熟読してください。

第1章:日本版DBSの大きな特徴「事業者照会型」の仕組みと対象事業者

事業者照会型

日本版DBSの正式名称は、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(略称:こども性暴力防止法)です。この法律を理解するための第一の視点となるのが、情報の提供方式です

 

働く人ではなく「事業者」に前科情報を直接渡す仕組み

 

日本版DBSの最大の特徴は、「事業者照会型」を採用している点にあります。諸外国の制度などを参考にする際、前科などの経歴を確認する方法としては、大きく分けて「事業者照会型(事業者に前科情報を提供)」と「無犯罪証明型(働く人自身が無犯罪証明書を取得して事業者に提供)」の2つの方向性が存在しますが、日本版DBSでは前者にあたる「事業者照会型」が採用されました

 

これはつまり、事業者の手元に、極めてセンシティブな個人情報である「前科情報」が直接渡される仕組みであることを意味しています。働く人本人が取得した証明書を提示するだけではなく、公的な仕組みを通じて事業者が直接情報を取得・管理することになるため、事業者側には厳重な情報管理が強く求められます

 

学校設置者等と民間事業者における「義務」と「任意」の違い

 

この事業者照会型の仕組みは、対象となる事業者の属性によって適用方法が異なります。公立・私立の学校、認定保育園、放課後等デイサービス・児童発達支援などを運営する「学校設置者等」に対しては、この犯罪事実確認などの対応は「義務」として課せられます

 

一方で、学習塾、スポーツクラブ、放課後児童クラブなどの「民間教育保育等事業者」については、法律上の対応は「任意」とされています。しかし、民間事業者が従事者の「犯罪事実確認」を行いたいと考えた場合には、誰でも簡単に照会ができるわけではありません。民間事業者がこの制度を利用するためには、学校設置者等と同等の厳格な対応を取れる体制をあらかじめ整えた上で、国からの「認定」を受けることが必要不可欠となります

 

認定を受けて制度を利用するためには、後述する情報管理や漏洩防止のための厳密なルール作りが必要となり、具体的には情報管理規定などを定めること(ひな型なども参照)が必要になってきます

第2章:前科情報は「要配慮個人情報」であるという大前提

要配慮個人情報

事業者が日本版DBS(こども性暴力防止法)の仕組みを利用して犯罪事実確認を行う際、最も留意しなければならないのは、取り扱う前科情報が個人情報保護法において特別な扱いを受ける「要配慮個人情報」に該当するという事実です

 

・個人情報保護法第2条第3項における定義

個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)の第2条第3項において、「要配慮個人情報」は以下のように厳密に定義されています

 

「この法律において『要配慮個人情報』とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。」

 

この条文からも明らかな通り、「犯罪の経歴」=前科情報は、本人の人種や信条、病歴などと並んで、最も取り扱いに慎重を期さなければならない情報として法律上位置付けられています

 

不当な差別や偏見を防ぐための極めて高いハードル

 

要配慮個人情報に指定されている最大の理由は、その情報が本人の意図しない形で広まることで、「不当な差別、偏見その他の不利益」が本人に生じる危険性が極めて高いためです

 

日本版DBSによって、事業者は子どもの安全を守るという公益的な目的のために、特例的にこの「要配慮個人情報」である前科情報にアクセスすることが可能となります。しかし、それはあくまで限定的な目的のための特例であり、事業者は取得した情報を「対象者の就業制限や配置転換の判断」といった法の定める目的以外に用いることは決して許されません。

 

情報漏えいや管理の不備が発生した場合、対象者の社会生活を根本から破壊する恐れがあるため、事業者には一般の個人情報管理とは次元の異なる、最高度のセキュリティ対策と倫理観、そして厳重な情報管理規定の策定と運用体制の構築が求められるのです

第3章:情報漏洩による事業者の甚大な損害賠償リスク〜最高裁判例から学ぶ〜

最高裁判例

前科情報(要配慮個人情報)の取り扱いを誤った場合、事業者はどのような法的リスクを背負うことになるのでしょうか。この点について深い示唆を与えてくれるのが、過去に日本の最高裁判所で争われたノンフィクション「逆転」事件(最高裁判所平成6年2月8日判決)です

 

・ノンフィクション「逆転」事件の概要と最高裁の判断

この事件は、あるノンフィクション小説の中で、原告の過去の前科情報が実名で公開(出版)されてしまったため、原告がプライバシー侵害など不法行為に基づく損害賠償を求めて提訴した事件です

 

この裁判において最高裁判所は、前科照会事件の理を引用し、「この理は、右の前科等に関わる事実の公表が公的機関によるものであっても変わるものではない」と明確に述べました

 

さらに最高裁は、前科のある人物の権利について、以下のように非常に重要な判断基準を示しました。 「有罪判決を受けた後、あるいは服役を終えた後においては、一市民として社会に復帰することが期待されるのであるから、その者は、前科等にかかわる事実の公表によって、新しく形成している社会生活の平穏を害されその更生を妨げられない利益を有する」

 

裁判所は、このように当事者の「更生を妨げられない利益」と情報の公表による利益の比較衡量を行った上で、結果として情報公開側に対する不法行為責任を認めました

■日本版DBSにおける事業者への重い示唆と損害賠償請求リスク

この最高裁判例が、今後の日本版DBSの運用に与える影響は計り知れません。日本版DBSの仕組みによって、認定事業者は合法的に前科情報の提供を受けることになりますが、もしその情報を事業者が外部に漏えいしてしまった場合、大きな法的責任を問われることになります

 

具体的には、漏洩された対象者(従業員や応募者)から、「前科情報を漏えいされたことで、新しく形成していた社会生活の平穏が害され、社会への更生を妨げられないという法的な利益を侵害された」として、事業者に対して多額の損害賠償請求の訴えが起こされるリスクが十分に考えられます

事業者は、「子どもを守るための制度だから」という大義名分にあぐらをかくことは許されません。一度手に入れた前科情報が漏洩すれば、一個人の人生を破壊し、企業としても致命的な損害賠償と信用の失墜を招くという強い危機感を持つ必要があるのです

第4章:日本版DBSにおける「職員等の秘密保持義務」と厳しい刑事罰

職員等の秘密保持義務

前科情報の漏えいがもたらす甚大な被害を防ぐため、こども性暴力防止法では、情報の取り扱いに対して「職員等の秘密保持義務」を明確に規定するとともに、それに違反した者に対する極めて厳しい罰則」を設けています

 

【法第39条:職員等に課せられる絶対的な「秘密保持義務」】

法律の第三十九条では、前科情報を取り扱う者に対する秘密保持義務が明記されています。対象となるのは、「犯罪事実確認書受領者等」です

具体的には、その法人の「役員若しくはその職員若しくは従業者又はこれらであった者」が義務の対象となります。重要なのは、「これらであった者」つまり退職者であっても、在職中に知り得た情報についての守秘義務が一生涯課せられるという点です

 

これらの者は、その業務に関して知り得た犯罪事実確認書等に記載された情報の内容を、「みだりに他人に知らせ、又は不当な目的に利用してはならない」と厳しく禁じられています。(※第四十五条第二項においても同じ規定が適用されます。)

 

【法第43条:最も重い「情報不正目的提供罪」の罰則内容】

 

秘密保持義務に違反する行為の中でも、特に悪質とされるのが第四十三条に規定される「情報不正目的提供罪」です

 

これは、犯罪事実確認書受領者等(役員、職員、従業者、または過去にそうだった者)が、業務に関して知り得た犯罪事実確認書に記載された情報を、「自己又は第三者の不正な利益を図る目的で提供したとき」に成立する犯罪です。例えば、情報を脅迫や金銭要求の材料にしたり、ライバル企業にダメージを与える目的で情報を横流ししたりする行為がこれに該当します。

この罪を犯した場合の法定刑は非常に重く設定されています。具体的には、「二年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金 に処し、又はこれを併科する」と規定されています。拘禁刑(従来の懲役・禁錮を一本化した刑罰)が最長2年課される可能性があり、さらに罰金刑と両方が同時に科される(併科)可能性もあるなど、個人に対して極めて重い刑事罰が下されることになります

第5章:管理体制の不備・漏洩に対する罰則(情報漏示等罪・虚偽表示罪)

情報漏示等罪・虚偽表示罪

悪意のある情報提供だけでなく、過失や管理体制の不備による情報漏えいや、制度を悪用するような行為に対しても、こども性暴力防止法は複数の罰則(第五章・管理体制の不備等についての罰則)を用意しています

 

【法第45条:情報漏示等罪(みだりな情報漏えい・不当利用)】

第四十五条では、先述の第三十九条(秘密保持義務)の規定に違反して、業務に関して知り得た犯罪事実確認書に記載された情報の内容を「みだりに他人に知らせ、又は不当な目的に利用した者」に対する罰則が定められています

 

第43条のような「自己や第三者の不正な利益を図る明確な目的」が立証されなくても、単なるおしゃべりや不注意によるSNSへの書き込み、社内での目的外利用などを行った場合、「一年以下の拘禁刑若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という厳しい刑罰の対象となります

 

【法第46条:管理体制の不備・帳簿違反等に対する罰則】

 

個人への罰則だけでなく、事業者の管理体制そのものの不備に対しても罰則が存在します。第四十六条によれば、以下のような行為を行った場合、「五十万円以下の罰金」が科せられます

 

帳簿等の管理不備:犯罪事実確認の実施状況を記載した帳簿を備え付けない、不記載、虚偽の記載をする、または帳簿を法律の定めに従って保存しない場合

 

調査・立ち入り検査への非協力:犯罪事実確認の実施状況や確認記録の管理状況に関して、行政庁からの報告徴収や立入検査に対して、報告をしない、虚偽の報告をする、または検査を拒否等した場合

 

確実な廃棄・消去の怠り:不要となった犯罪事実確認書の廃棄や、犯罪事実確認記録の消去を適切にしなかった場合

 

これらの規定により、事業者は前科情報を取得した後の日々の帳簿付けから、最終的なデータの完全な破棄に至るまで、国が求める基準を完璧に満たす運用を継続しなければなりません

 

【法第50条第1項:虚偽表示罪(認定事業者に関する詐称)】

 

さらに、民間事業者向けの「認定」制度の根幹を守るための罰則も設けられています。 自分が「認定事業者ではない」にもかかわらず、認定事業者の表示を行ったり、これと紛らわしい表示を付したりした場合には、虚偽表示罪(第四五十条第一項)が成立します

 

この罪を犯した場合は、「一年以下の拘禁刑若しくは五十万円以下の罰金又はこれを併科(拘禁刑と罰金の両方を科すこと)」に処せられます。認定マークの不正使用などは、施設を利用する子どもや保護者を欺く行為であるため、厳格に取り締まられます

まとめ:日本版DBS「事業者照会型」導入に向けて経営者が直面する重い責任と事前準備の重要性

リスク回避​

本ページでは、日本版DBS(こども性暴力防止法)の最重要ポイントである「事業者照会型」のシステムと、そこに伴う莫大なリスク・罰則について詳しく解説しました

 

制度の要点は以下の通りです。
1. 事業者照会型:従業員等ではなく、事業者に対して直接「前科情報」が提供される仕組みであること
2. 要配慮個人情報の取り扱い:前科情報は不当な差別や偏見を生む可能性が高いため、個人情報保護法における「要配慮個人情報」として最高レベルの厳格な管理が必須であること
3. 損害賠償と更生の権利:過去の前科情報漏えいが「逆転」事件の最高裁判例のように不法行為とみなされ、対象者の「更生を妨げられない利益」を侵害したとして事業者が多額の損害賠償を請求される恐れがあること
4. 厳重な秘密保持義務と刑事罰:情報の不当利用や漏洩に対しては、退職後も含めた従業員に「二年以下の拘禁刑」などの重い刑事罰(情報不正目的提供罪・情報漏示等罪)が用意されていること
5. 組織への指導と罰則:情報の廃棄漏れや帳簿の不備、立ち入り検査の拒否といった管理体制の不備そのものに対しても、罰金刑が科されること
日本版DBSの導入は、子どもを性暴力から守るための画期的な一歩です。しかし同時に、この制度を利用する事業者(特に認定を目指す民間事業者)にとっては、「要配慮個人情報」を取り扱うための極めて重い法的責任と、厳密な「情報管理規定」に基づく運用体制をゼロから構築しなければならないという、大きな経営課題でもあります
事業継続と子どもの安全確保を両立させるためにも、経営者や人事担当者はこの「事業者照会型」の法的リスクと罰則の重さを深く理解し、施行に向けた周到な社内体制の整備・従業員教育を進めていくことが求められます

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