2026-01-05
2026年(令和8年)12月25日に施行される「こども性暴力防止法(日本版DBS)」において、事業者に課せられる義務は、採用時の犯罪事実確認(犯歴照会)だけではありません。制度の実効性を確保し、こどもたちの安全を継続的に守るための重要な仕組みとして、「定期報告の義務」が定められています。
本記事では、学校設置者や認定を受けた民間教育保育等事業者が、具体的に何を、いつ、どのように報告すべきか、最新のガイドライン案に基づき網羅的に解説します。
1. 「定期報告」の目的と重要性
こども性暴力防止法における定期報告は、事業者が犯罪事実確認を適切に実施しているか、また研修や安全確保措置、情報管理措置が形骸化していないかを、国(こども家庭庁)や所轄庁が監督・指導するために行われます。
これにより、不適切な運用や義務違反を早期に発見し、是正命令や認定の取り消しといった監督権限を適切に行使できるようになります。
2. 報告の対象者と報告先の役割分担
事業者の形態によって、報告先と報告内容が異なります。
• 認定事業者等(学習塾、スポーツクラブ、認可外保育施設など): 犯罪事実確認の実施状況、安全確保措置(面談、アンケート、研修等)、情報管理措置のすべてについて、直接「国(こども家庭庁)」へ報告します。
• 学校設置者等(私立学校、私立保育所、児童養護施設など):
◦ 国(こども家庭庁)への報告:犯罪事実確認の実施状況、および情報管理措置の実施状況。
◦ 所轄庁(自治体、教育委員会等)への報告:犯罪事実確認の実施状況、および安全確保措置の実施状況。
• 国公立学校・施設等: 行政機関としての自己規律が期待されるため、法に基づく国への定期報告義務からは除外されていますが、各業法(学校教育法や児童福祉法等)に基づき、所轄庁による内部監査や報告が求められます。
3. 定期報告のスケジュールと頻度
報告は原則として年1回、オンラインシステムを通じて行われます。
• 学校設置者等(義務対象): 毎年4月末日を基準日とし、その時点の状況を5月末日までに報告します。 ※ただし、施行直後の混乱を避けるため、初回の報告は令和10年度(2028年度)から開始される予定です。
• 認定事業者等(認定対象): 認定を受けた日から1年が経過する日の前日(初回期限)までに報告し、その後は1年ごとに、期限の前月初日時点の状況を報告します。
4. 具体的な報告事項(チェックリスト形式)
報告内容は主に「犯罪事実確認」「安全確保措置」「情報管理措置」の3つのカテゴリーに分かれます。
① 犯罪事実確認の実施状況
• 対象者の一覧:報告期間中に一度でも対象業務に従事していた者の氏名等。
• 期限管理の状況:新規採用者、現職者、5年ごとの再確認者が、それぞれの期限までに確認を完了しているか。
• いとま特例の適用:急な欠員等で「いとま特例」を適用した人数や、その間の「必要な措置(1対1にさせない等)」の実施内容。
• 犯歴該当者の数:特定性犯罪事実該当者の数(※個人名の特定には配慮されます)。
② 安全確保措置の実施状況(主に認定事業者および学校の所轄庁向け)
• 早期把握:日常観察、定期的な面談・アンケートの実施状況。
• 相談体制:内部・外部相談窓口の設置と周知状況。
• 研修:対象従事者が、座学と演習を組み合わせた法廷研修を受講しているか。
• 調査・保護・支援:事案が発生した場合の、調査手順の遵守や被害児童への支援実績。
③ 情報管理措置の実施状況
• 管理責任者の選任:情報の管理を統括する責任者が置かれているか。
• 情報管理規程の遵守:策定した規程に基づき、アクセス制限や取扱記録の作成が行われているか。
• 物理的・技術的対策:情報の閲覧エリアの制限、PCのセキュリティ対策、パスワード管理の状況。
• 廃棄・消去:離職者や5年経過後の記録を、30日以内に適切に廃棄・消去しているか。
5. 実務を支える「帳簿の備付け」義務
事業者は、定期報告の根拠となる「帳簿」を毎年度作成し、5年間保存する義務があります。
実務負担を軽減するため、こども家庭庁が構築する「こども性暴力防止法関連システム」上で犯罪事実確認の申請を行うことにより、帳簿の主要事項は自動的に記録・保存される仕組みとなる予定です。事業者はこのシステムデータを基に、効率的に報告書を生成することが可能です。
6. 報告を怠った場合の罰則とリスク
定期報告の義務を無視したり、虚偽の報告を行ったりした場合、以下のペナルティが科されます。
• 刑事罰:帳簿を備えず、若しくは虚偽の記載をし、又は報告を怠った場合、50万円以下の罰金に処される可能性があります。これは法人に対しても科される「両罰規定」が適用されます。
• 行政処分:認定事業者の場合、定期報告の不履行は認定の取消事由となり、取消しを受けた場合は、その後2年間は再認定を受けることができません。
• 社会的リスク:義務違反が認められた場合、事業者名がインターネット上で公表されるため、保護者や社会からの信頼を著しく損なうことになります。
まとめ:定期報告は「こどもを守る姿勢」の証明
定期報告の義務は、単なる行政手続きではありません。事業者が自ら襟を正し、「私たちの現場は、ルールに則ってこどもたちを性暴力から守り続けている」ということを公に証明するプロセスです。