2025-12-30
手続きフロー
こども性暴力防止法(通称:日本版DBS)の施行により、教育・保育の現場では、従事者が過去に性犯罪を犯していないかを確認する「犯罪事実確認」の手続きが不可欠となります。この手続きは、こどもの安全を守るための極めて重要なステップであり、厳格なプライバシー保護と適正な事務処理が求められます。
本記事では、事業者の皆様や従事予定者の皆様に向けて、最新のガイドライン案等に基づき、犯罪事実確認の具体的な手続きフローを詳しく解説します。
1. 手続きの全体像とシステム概要
犯罪事実確認の手続きは、原則としてこども家庭庁が構築する「こども性暴力防止法関連システム(仮称)」を介して、完全にオンラインで実施されます。このシステムは、事業者の申請と、従事者本人による情報提出、そして法務省(検察庁)の犯歴照会を一つの流れで結ぶものです。
施行予定日は2026年(令和8年)12月25日となっており、事業者はこの日以降、新規採用者や現職者に対して順次確認を行う必要があります。
2. ステップ1:事業者による事前準備
まず、事業者はシステムを利用するためのアカウントを登録しなければなりません。
• GビズIDの取得: なりすまし防止とセキュリティ確保のため、事業者は「GビズIDプライム」を取得する必要があります。
• 権限者の設定: 組織内で「犯歴情報の閲覧権限を持つ責任者」や「申請事務のみを行う担当者」などの権限を適切に割り当てます。情報の機微性に鑑み、閲覧者は必要最小限に限定することが義務付けられています。
• 対象者の特定: 業務が「支配性・継続性・閉鎖性」の3要件を満たす従事者を、確認の対象者として特定します。
3. ステップ2:事業者からの交付申請
採用の内定や配置転換の決定が行われた後、事業者が交付申請を開始します。
• 申請情報の入力: 事業者はシステムに、申請従事者の氏名、生年月日、従事予定日、業務内容などを入力します。
• 証明書類の添付: 雇用契約書の写しや内定通知書など、その者が対象業務に従事することを証する書類をアップロードします。
• 従事者への依頼: システムを通じて、従事者本人にアカウント登録と情報提出の依頼メールが送信されます。
4. ステップ3:従事者本人による書類提出(プライバシー保護の核心)
従事者のプライバシーを守るため、「性犯罪歴があるかどうかの根拠となる情報」は、従事者からこども家庭庁へ直接提出されます。
• 本人認証: 従事者は、マイナンバーカードをスマートフォンにかざし、専用アプリを用いて本人認証を行います。
• 戸籍情報の提出: システムを通じて、「戸籍電子証明書提供用識別符号」(電子的な鍵)を国に提供します。これにより、国は最新の戸籍情報を電子的に取得できるようになります。
• 外国籍の方の場合: 在留カードやパスポート、本国の戸籍相当書類などをシステムにアップロードして提出します。
5. ステップ4:こども家庭庁による照会と回答
書類が揃うと、こども家庭庁が法務省(検察庁)に対して、特定性犯罪前科の有無を照会します。
• 確認の対象となる罪: 不同意わいせつ、不同意性交等、盗撮、条例違反(痴漢等)などの「特定性犯罪」が対象です。
• 確認対象期間: 刑の執行終了等から20年(拘禁刑)、または10年(執行猶予・罰金)の期間内にある前科が確認されます。
6. ステップ5:結果の通知と交付フロー(「犯歴あり」の配慮)
照会の結果によって、その後のフローが大きく分かれます。
【特定性犯罪歴がない場合】
こども家庭庁から事業者に対し、速やかに「特定性犯罪事実該当者であると認められない」旨を記載した犯罪事実確認書がシステム上で交付されます。この場合、処理期間の目安は日本国籍者で約2週間程度です。
【特定性犯罪歴がある場合】
ここには、本人を守るための二段階のステップが設けられています。
1. 本人への事前通知: 事業者へ交付される前に、まず本人だけに「犯歴あり」の結果が通知されます。
2. 訂正請求・中止要請: 本人は通知を受けてから2週間以内に、「内容が事実でない」場合の訂正請求や、「内定を辞退するので、会社への通知を止めてほしい」という中止要請を行うことができます。
3. 事業者への交付: 本人が中止要請を行わなかった場合や、訂正請求が却下された場合にのみ、事業者へ「犯歴あり」の犯罪事実確認書が交付されます。
7. 特例措置(いとま特例)について
急な欠員や災害などにより、業務開始までに確認が間に合わない場合は、「いとま特例」が適用されます。
• 猶予期間: 従事開始から原則3か月以内(最大6か月)に確認を完了させればよいとする例外規定です。
• 必要な措置: 確認が完了するまでの間、事業者はその者を「特定性犯罪事実該当者」とみなして、「原則としてこどもと1対1にさせない」、「管理職が定期的に見守る」などの厳格な安全確保措置を講じなければなりません。
8. 情報管理と厳格な罰則
取得した情報は、採用判断や防止措置以外の目的で利用してはならず、第三者への提供も厳禁です。
• 廃棄・消去: 犯罪事実確認から5年経過後の年度末、または従事者の離職後30日以内には、情報を確実に廃棄・消去しなければなりません。
• 罰則: 情報をみだりに他人に知らせたり不当に利用したりした場合、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、不正目的での提供は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。