2025-12-29
確認対象及び期限
こどもを性暴力から守るための新法、通称「日本版DBS」が2026年12月に施行されます。この制度の核心は、こどもと接する現場で働く従事者の「性犯罪歴」を確認し、リスクのある人物がこどもに近づくのを未然に防ぐことにあります。
本記事では、事業者や保護者が最も気になる「誰が確認の対象になるのか」「いつまでに確認を終える必要があるのか」という2つの重要ポイントについて、最新の「ガイドライン案」や「中間とりまとめ」に基づいて詳しく解説します。
1. 犯罪事実確認の「対象者」:誰をチェックすべきか?
犯罪事実確認の対象となるのは、単に「こども向け事業を行っている」から全員というわけではありません。法律では、業務の性質に基づいて厳密に定義されています。
対象となる従事者の基準(3つの要件)
制度の対象となるのは、その業務がこどもに対して以下の3つの性質をすべて備えている場合です。
1. 支配性:指導や養護を通じて、こどもに対して優越的・支配的な立場に立つこと。
2. 継続性:日常的・定期的に、あるいは反復して継続的にこどもと接すること。
3. 閉鎖性:保護者の監視が届かず、第三者の目がない「密室」や「オンライン上のやり取り」で接する機会があること。
具体的な職種の例
• 一律に対象となる職種:校長、園長、教諭、保育士、塾講師、スポーツ指導員、放課後児童支援員など、直接指導を担うメインスタッフは漏れなく対象です。
• 実態に応じて判断される職種:事務職員、送迎バスの運転手、調理員、清掃員、警備員、スクールソーシャルワーカーなどです。これらの職種でも、「バスで最後の一人と1対1になる」「別室でこどもの面倒を見る」といった実態があれば、確認の対象となります。
• 短期従事者・ボランティア:雇用形態や無償・有償を問わず、実態として上記の3要件を満たす場合は、1日単位のスポットワーカーであっても対象となります。
2. 確認対象となる「罪の種類」と「期間」
確認されるのは「特定性犯罪」と呼ばれる前科です。
対象となる罪(特定性犯罪)
不同意わいせつ、不同意性交等、児童買春、児童ポルノ法違反、性的姿態撮影等(盗撮等)といった法律違反に加え、各都道府県の迷惑防止条例(痴漢・盗撮・卑わいな言動)青少年健全育成条例(淫行・わいせつ行為)に基づく前科も含まれます。
確認対象期間(20年・10年・10年ルール)
刑の種類によって、以下の期間内の前科が確認されます。
• 拘禁刑(服役した場合):刑の執行終了等から20年。
• 拘禁刑(執行猶予がついた場合):裁判確定日から10年。
• 罰金刑:刑の執行終了等から10年。
この期間内であれば、たとえ「刑の消滅(復権)」が成立していても、本制度においては「特定性犯罪事実該当者」として扱われます。
3. 犯罪事実確認の「期限」:いつまでに終えるべきか?
確認のタイミングは、従事者のステータス(新規・現職・継続)によって異なります。
① 新規採用者・配置転換者:業務開始前
新たに採用する人や、別の部署からこどもと接する業務に異動してくる人については、原則として「実際にその業務を行わせるまで」に確認を完了させなければなりません。内定通知や異動内示が出た時点から申請が可能となります。
② 施行時の現職者:猶予期間あり
2026年12月25日の施行時点で既に働いているスタッフについては、一度に大量の申請が集中するのを避けるため、以下の猶予期間が設けられています。
• 学校設置者等(義務対象):施行日から3年以内(令和11年12月24日まで)。
• 民間教育保育等事業者(認定対象):認定を受けた日から1年以内。
③ 定期的な再確認:5年ごと
一度確認を終えた従事者であっても、その後も継続して勤務する場合は、5年ごとに改めて確認(再確認)を行う義務があります。
4. 特例措置(いとま特例):急な欠員への対応
「急な病欠で明日から代わりの人を入れなければならない」といった緊急事態には、「いとま特例」が適用されます。
• 適用条件:予見できない欠員や災害など、業務開始までに確認を行う余裕がなく、直ちに働かせなければ運営に著しい支障が出る場合に限られます。
• 猶予期限:業務に従事させた日から原則3か月以内(一定の要件で最大6か月)に確認を終える必要があります。
• 必要な措置:確認が完了するまでの間、その人物を「犯歴あり」とみなして、「原則としてこどもと1対1にさせない」「管理職が頻繁に巡回する」といった厳格な安全確保措置を講じなければなりません。
5. 情報管理:最重要のルール
犯罪事実確認で得られる情報は、極めて機微な個人情報です。取り扱いを誤ると重いペナルティがあります。
• 目的外利用の禁止:採用判断や防止措置以外の目的で利用したり、保護者を含む第三者に提供したりすることは厳禁です。
• 廃棄・消去の義務:従事者の離職後30日以内、あるいは5年ごとの確認期限を過ぎた後などは、速やかに情報を確実に廃棄・消去しなければなりません。
• 守秘義務と罰則:犯歴情報をみだりに他人に知らせた場合や、不正な利益のために提供した場合は、最高2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科され、事業者も罰せられます。
まとめ:多層的な盾でこどもを守る
犯罪事実確認制度は、単なる「書類審査」ではなく、こどもたちの安全を永続的に守るための「生きたセキュリティシステム」です。
比喩による説明: この制度は、こどもたちが通う大切な建物に設置する「最新式の虹彩認証ゲート」のようなものです。
• 確認対象は、そのゲートを通ってこどもたちの個室に入ることができる「鍵を持つ人」全員です。
• 罪の確認は、過去20年分の「不審者リスト」との照合です。
• 期限は、建物に足を踏み入れる前の「事前チェック」が基本ですが、既に入っている人にも「一斉点検」を行い、さらに5年ごとに「免許更新」のような定期検査を課すことで、常に安全な状態をアップデートし続けます。 もし急ぎで誰かを通さなければならないとき(いとま特例)でも、その人の後ろには常に「ベテランの警備員」が寄り添い、安全が確認されるまで一人きりにさせないという厳重なガードを敷くのです。
このように、確認の対象と期限を正しく運用することで、こどもたちにとって真に安全な環境を築くことが可能になります。